文通歴35年・自分宛のお手紙も書き続けて8年という小森利絵さん。この度、お手紙のある日常を書き綴ったエッセイ『おてがみじかんで ほんの少し 心にゆとりを』を出版しました。
今回、本をつくろうと思ったいきさつも含めて、お話をうかがいました。
本を出版することに憧れがあったと小森さん。
「出版の選択肢も増えてきていますから、電子書籍という方法もあったでしょう。でも、物体として存在する“紙の本”へのこだわりがあったのと、編集者という第三者の視点もほしかったので出版社から出版したいとも。数年前から企画書を書いて各社に送っていたものの、どこからもお声がかからずでした」
そんな時、「お手紙の活動で小さな本をつくって、イベントに一緒に参加しませんか?」と声をかけてもらったことで、半年後のそのイベントまでに冊子を用意することが目標に。
そんな時に出会っていたのがBookoです。
「ZINEなど自力での冊子制作も考えましたが、Bookoならテンプレートで簡単に本をつくれます。費用もテンプレート代とISBNコード代だけ。オンデマンド出版だから1冊から印刷・製本もできます。費用をそれほどかけず、“紙の本”としても出版できるなんて! 自分の手で販売するより、広がる可能性がありますから、わくわくしました。『いつか本をつくれたら』と“いつか”を待つのではなく、とりあえず1冊つくってみようと踏み出せたんです」
制作期間は約2カ月半。短期間で本づくりが実現できた理由は、「いつか」と思いながらも、その日のために書き溜めてきたコラムがあったからと振り返ります。
「今回、2016年から書き綴ってきたお手紙コラム全98本から十数本をピックアップ・再編集して本をつくりました。このコラムがなければ、“いつか”は“いつか”のままで終わっていたかもしれません」
小森さんも、長年「本をつくりたい」と思い続けてきた一人。だからこそ、本を作りたい人に伝えたいのが「いつ、きっかけやチャンス、タイミングが飛び込んでくるかはわかりません。本の素材になるものがまだないのでしたら、ブログなどに読者を意識した記事を書いてみてはいかがでしょうか。締切りがないものはどんどん後回しにしがちなので、自分のブログ以外で連載できる媒体を探してみるとか、自分のブログであっても『毎月第3水曜に記事をアップします』と宣言して、読者に約束するといった工夫をすると書き続けられると思います」とも。
本をつくろうと決めてから0から内容をつくっていくのか、「こんな本をつくりたい」と内容をつくってから本をつくるのか。本をつくるにしても、いろんな始め方がありますね。
「お手紙本を出しておきながら、実はお手紙を時々しか書かないんです。だけど、その“時々”でも書くことが大切なんだと思っています」と小森さん。日常ではメールやSNSのメッセージ機能、LINEをフル活用しているそうですが、気づけばお手紙も連絡手段・コミュニケーションツールの一つとして残ってきたそうです。
「幼稚園時代の幼なじみとはずっと文通ですし、40代の私のまわりにはお手紙文化が残っていて、好きな人も多かったからだと思います。今はスピーディーで便利な連絡手段・コミュニケーションツールが多くあるおかげで、お手紙は余分や無駄を楽しめるものになってきました。その余分や無駄を楽しむことで、流れるように過ぎていく日々の中で立ち止まることができたり、他者への想像が広がったりするんだと思っています」